目指せ黒帯! 益嶋裕の日本株道場(14) 保有ポートフォリオの損益を変化させないリスクヘッジの方法

目指せ黒帯! 益嶋裕の日本株道場(14) 保有ポートフォリオの損益を変化させないリスクヘッジの方法

皆様こんにちは、マネックス証券の益嶋です。「目指せ黒帯! 益嶋裕の日本株道場」第14回をお届けいたします。本コラムでは、「これから投資を始めたい」「投資を始めてみたけれどなかなかうまくいかない」といった方向けに、投資家としてレベルアップするためのいろいろな知識をお伝えしていきます。今月もまずは最近のマーケット動向を簡単にご紹介します。

日経平均がまさかの大幅下落

前回のコラムが掲載された9月28日時点で、日経平均は2万4,120円でした。今月のコラムを書いている10月26日時点での日経平均は2万1,184円と、まさかの3,000円近い大幅下落。

今回の下げに関しては、米長期金利の上昇、米中貿易戦争の激化、それらに伴う今後の米景気や中国景気の減速懸念、サウジアラビアのジャーナリスト殺害事件による中東情勢悪化懸念、英国のEU離脱問題の混迷、さらに追い打ちをかけるようにイタリアとEUの間の財政規律を巡る対立、安倍総理の消費増税実施表明による今後の内需悪化懸念など、さまざまな原因が挙げられるでしょう。悲観・懸念材料が非常に多く、マーケットが耐えきれなかったという印象です。

少しでも反発してほしいところですが、ここまで株価が崩れてしまうと再び高値を奪回するにはかなり時間がかかるのかなと思っています。

日経平均の推移 (出典:マネックス証券ウェブサイト)

比較的簡単にリスクヘッジをする方法

それでは、今月も本題に入っていきます。
今月の本題は、マーケットの大幅下落と関係しています。すでに投資をされている方の多くは、足元の大幅下落を受け保有銘柄の株価も大きく下落したと思います。そして、どこまで株価が下がるのかご不安に思われているのではないでしょうか。そんな方のために、保有しているポートフォリオの損益を変化させない、比較的簡単な「リスクヘッジ」の方法をご紹介します。

まず結論からお伝えすると、その方法とは「保有する株式ポートフォリオの半分の金額のNEXT FUNDS 日経平均ダブルインバースETF(1357)を購入すること」です。どういうことかご説明してまいります。

まず、「NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバースETF(1357)」とは、「日々の日経平均株価変動率のマイナス2倍」の変動率となるよう設計されたETF(上場投資信託)です。下記のグラフに、日経平均と同ETFの推移を示しましたのでご覧ください。キレイに反対の値動きをしていることがおわかりいただけるかと思います。

日経平均とNEXT FUNDS 日経平均ダブルインバースETF(1357)の推移 (出典:Bloombergデータよりマネックス証券作成)

では、なぜこのETFを株式の保有金額の半分買うことがリスクヘッジになるのでしょうか? 厳密に言うと、どのくらいの金額を保有しておけばリスクヘッジになるかは、個人のポートフォリオごとに差があります。その違いは、金融用語で「ベータ」と呼ばれる数字によって変わります。

ベータとは、「市場が1動いた際にどのくらい価格が動くか」を意味しています。例えば、日経平均が1%動いた際に、2%動く個別株はベータが2です。反対に、日経平均が1%動いても0.5%しか動かない個別株のベータは0.5ということになります。そして、そのベータは、どのくらいの期間で株価を比較するかによって異なります。

ここからは、具体例で見ていきましょう。
ファーストリテイリング(9983)、セブン&アイホールディングス(3382)、東海カーボン(5301)の3銘柄の日経平均に対する過去3カ月間のベータを計算すると、ファーストリテイリングが0.989、セブン&アイホールディングスが0.443、東海カーボンが1.529となりました。これは、日経平均が1%動いた際に、ファーストリテイリングは0.989%、セブン&アイホールディングスは0.443%、東海カーボンは1.529%動く傾向があったことを示しています。

このように、銘柄ごとにベータは異なるので、厳密にはご自身の保有ポートフォリオによってリスクヘッジをするためのダブルインバースの保有比率は異なります。ただ、それぞれのポートフォリオのベータを計算するのは少し手間がかかりますし、ざっくりと市場の変動に対するリスクヘッジをする、ということでも十分有効なのではと考えられます。

2月の急落の際に当てはめて考えてみる

本当に上記の方法がリスクヘッジになるのか、2018年2月の急落の際に当てはめて確かめてみましょう。

日経平均は、1月23日に2万4,124円の高値をつけた後にやや調整し、2月5日に592円、6日に1,071円の急落となりました。600円近く下げた2月5日に、リスクを感じてダブルインバースETFを購入することにした場合を考えます。

実際の損益を考えるために、マネックス証券で保有されているお客様が多い、みずほフィナンシャルグループ(8411)、イオン(8267)、トヨタ自動車(7203)、吉野家ホールディングス(9861)、ソニー(6758)の5銘柄を保有したポートフォリオがあると仮定します。みずほは株価が低いため1,000株、その他の4銘柄は100株保有しているとすると、日経平均が急落した2月5日時点で、以下の通り保有金額は約190万円になっていました。

2月5日時点での各銘柄の評価額 (出典:QUICKデータよりマネックス証券作成)

約190万円×0.5=95万円ですので、95万円分のダブルインバースETFを2月5日の終値で購入したとしましょう。5銘柄のみ保有していた場合と、ダブルインバースETFをポートフォリオに加えた場合の損益の変化は以下のとおりです。

5銘柄のみ保有していた場合とダブルインバースETFを追加したポートフォリオの損益推移 (出典:Bloombergデータよりマネックス証券作成 ※取引手数料等は未考慮)

日経平均は2月5日に急落した後に反発した時期もありましたが、戻しきれず3月23日には2万617円の安値まで下落しました。青い線で示した5銘柄のポートフォリオのみですと、2月5日と3月23日を比べると約8%下落しています。一方、赤い線で示したダブルインバースETFを追加した際の損益は、ほとんど動かず安定的に推移し、3月23日時点でほぼ100の位置にあることがご覧いただけると思います。

このように、上記の方法はリスクヘッジの手段としてある程度有効なことがご確認いただけたのではないでしょうか。なお、ダブルインバース型のETFであればTOPIX型などでもかまいませんが、今回は流動性や知名度の高いNEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックスETFを例にご説明しています。

繰り返しになりますが、厳密にはご自身のポートフォリオのベータ値を算出して、そこから計算を行う必要があります。しかし、あまりに偏ったポートフォリオでない限り、ざっくりと保有ポートフォリオの半分の金額を購入すればワークするはずです。ポートフォリオのリスクヘッジをする方法として、ぜひご参考にしていただければと思います。

ただし、ダブルインバースETFは、「保有コストがかかる」「必ずしも日経平均のマイナス2倍の変化とならない場合がある」「保有し続けていると株価の反発局面でリターンを取れない」などの注意すべき点もありますので、そのあたりも頭に入れていただきながら、基本的に短期での保有を前提とした戦略としてご理解いただければと思います。

今月も最後までお読みいただきありがとうございました。ではまた次回!

執筆者プロフィール : 益嶋 裕

マネックス証券 マーケット・アナリスト兼インベストメント・アドバイザー

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。2008年4月にマネックス証券に入社。2013年からアナリスト業務に従事。2017年8月より現職。現在は「日本株銘柄フォーカス」レポートや日々の国内市況の執筆、各種ウェブコンテンツの作成に携わりながら、オンラインセミナーにも出演中。日本証券アナリスト協会検定会員。
■マネックス証券:https://www.monex.co.jp/

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